疲れた体に鞭打って進む
*山を越えたと思った、もう一山あった
環境ISOの外部審査を終えて半年の仕事に区切りがついたと思ったら、
今週は少林寺拳法の大会の準備が迫っていたでござる。
*朦朧とする意識を奮い立たせて進行中
疲労が溜まってよく動かなくなっている脳みそを奮い立たせて
お仕事を進めています。
でも、協力してくれる人の骨折りがなかったらとっくに破綻してました。
ではでは。
お気に入りの作家 上田秀人「奥祐筆秘帳」シリーズ
*「奥祐筆」シリーズからのファン
自分がファンの作家さんに上田秀人さんがいます。
この方の本との出会いは10年ほど前でしょうか。
この方の「奥祐筆秘帳」シリーズが
「この文庫書き下ろし時代小説がすごい!」 という
時代小説のベストを選ぶ企画で1位になった後くらいですね。
*ジョーカー的な役職を見つけるのがうまい
最近はやや傾向が変わってきましたが、
この方の作品特徴の一つに
「ジョーカー的な役職を人を主人公にする」
という点があります。
ここでいうジョーカーとは
「表向きは大した権限を持っていないのに、
ある局面ではとてつもなく強力な力を発揮する」
という意味で捉えてください。
例えば「奥祐筆秘帳」。
この作品は、江戸幕府の『奥祐筆』という役職にある壮年の立花併右衛門と、
そのお隣の旗本の次男坊柊衛悟が協力して、さまざまな陰謀に立ち向かっていく、
一種のバディ(相棒)物です。
*奥祐筆って何?
この『奥祐筆』という役職は、幕府の書類のチェックや決裁を行う書類係です。
自分自身では企画立案などはせず、あくまでチェックと決裁しか行いません。
従って、奥祐筆自身は何かの施策を実行できるわけではないので、
表向きの身分や権限は低いです。
ところで、公的書類というものは決裁が下りないと効力を持ちません。
そして、幕府の書類は奥祐筆がOKを出さない限り、書類は決裁されません。
つまり、奥祐筆は幕府の役人の業務の決定権を握っています。
例えば、幕府の偉い人(例えば老中)がOKを出した施策でも、
奥祐筆が決裁しないと、その施策は実行できません。
そのため、奥祐筆はいろんな人から賄い(ワイロ)を貰って裕福です。
また、作品内ではこちらの職権が重視されているのですが
幕府内の書類は殆どすべて奥祐筆に回ってきます。
おかげで幕府内のあらゆる情報を見通すことが出来ます。
これらの職権により、幕府の裏に流れる陰謀の真相を探っていきます。
*「金がないのだ」
奥祐筆シリーズの決まり文句です(笑) 。
奥祐筆シリーズの舞台となっている江戸中期のころは
経済活動が活発化し、お金を握る商人の力が拡大したのと
相対的に武士の懐が寂しくなり幕府や諸大名が借金で
がんじがらめになった時期です。
シリーズ話で多いのは借金返済などの一発逆転を狙った陰謀が多いです。
(金がない自分も妙に身に沁みます)
作者の上田さん自身が経済活動などにあまり詳しくないため、
自身の勉強の為に、主人公の若い柊衛悟は「世間知らず」、
奥祐筆で人生の先達が立花併右衛門を「世慣れた役人」に設定し、
併右衛門が物を知らない衛悟に教え諭すように、
その当時の経済状況などを説明する形をとったそうです。。
これのおかげで、同じように当時の状況を知らない自分も
随分と勉強になりました。
*インフレをおこなさない剣戟
もちろん、陰謀に迫れば命を狙われます。定番ですね。
主人公の柊衛悟自身も相当な使い手ですが、それを上回る腕前の刺客
「冥府防人」との死闘が続きます。
おもしろいのは、出てくる刺客が実戦経験が少ない人間が多い点です。
江戸中期になると武士もほとんど戦ったことが無く
道場での練習ばかりになるため、高い技能を持っているのに
実戦の緊張に呑まれて実力を発揮できません。
道場で戦えば柊衛悟が負けていたような刺客でも、
実戦で緊張に呑まれたり、頭に血が上って冷静さを失った刺客の
隙につけこんで、紙一重で勝ちを拾っています。
この展開は、ドラゴンボールなどであった
「敵の実力のインフレ」という長期連載のバトル漫画の問題を、
うまく抑制しています。
なので、どのシリーズを読んでも柊衛悟の成長が見られながらも、
敵の実力も人間離れしていかず、ちょどよい戦闘になっています。
というわけで、とても面白いので、興味を持たれましたら読んでみてください。
ではでは。